(7)ソフトウェア開発へのQualityFeedback

        大森晃, 池亀一, 菅原護

        品質, 19巻, 2号, 16-24, 1989(全9頁)

 

ソフトウェア開発において品質向上の継続性を確保するためには,いわゆる管理のサイクル(プラン,ドゥー,チェック,アクションのサイクル)を回し,継続的に工程改善をしていくことが重要である.その原動力となるのはチェックであり,チェックとアクションの間に介在するフィードバックである.これらに関するソフトウェア開発管理における問題は以下のように要約できる.

(a)チェックに関する問題:ソフトウェア自体の修正を目的とする「製品指向のチェック」に比べて,ソフトウェア開発工程の改善を目的とする「工程指向のチェック」が不十分である.

(b)フィードバックに関する問題:工程改善に結びつく明確かつ適切な指摘(質の高いフィードバック)が十分に行われていない.品質の継続的向上のためには問題(b) を克服すること,つまり工程改善のためのフィードバックの質を高めることが鍵となる.問題(a)も重要であるが,優れたフィードバックには優れたチェックが必要であるという意味で,それは必然的に問題(b)に含まれる.

 

フィードバックの質は,フィードバック情報の質,フィードバック情報の量,フィードバック情報のコスト,フィードバックのタイミングという4つの側面から捉えることができ,これらの質的側面から工程改善のためのフィードバックの質を高める活動を,Quality Feedback(QFB)と呼んでいる.

 

本論文は,主としてフィードバック情報の質の向上を重視して,QFBの方法論を展開し,その適用事例を示したものである.方法論は,開発現場に密着したソフトウェア開発の評価モデル(工程評価と生産物評価のためのモデル)をいかに構築するか,ソフトウェア開発の実情を評価するためのデータをいかに収集するか,開発現場が納得できるような評価をいかに行うか,開発工程の改善を動機付け具体的なアクションがとれるようフィードバック情報をいかに構成するかを提示している.適用事例は,外注比率が高まるなか富士通通信ソフトウェア部門の外注会社に適用したものである.本論文で提示したQFB方法論は富士通通信ソフトウェア部門におけるその後の「あゆみ活動」の出発点であり,また「あゆみ活動」は社内水平展開により富士通システム部門の外注管理にも取り入れられた.

 

査読者からは,ソフトウェアの品質管理の方法の一つとして良い論文であるとの意見を得ている.