12)Software quality deployment approach: Framework design, methodology, and example

        A. Ohmori

        Software Quality Journal, Vol.3, pp.209-240, 1994(全32頁)

 

製品品質への顧客満足にさらに接近していくために,日本においては(特に非ソフトウェアの製品分野においては)品質展開アプローチ(Quality Deployment Approach: QDA)が幅広く実施されてきた.QDAの考え方は1982年以来,徐々にソフトウェア製品にも適用されてきたが,その枠組み(ソフトウェアQDAとしてすべきことは何か,それらがどう関わりあうか,それらをどういう順で行うかを提示する基本的な体系)は未成熟である.ソフトウェア用にしっかりとしたQDAの枠組みを設計する必要があるが,設計のガイドラインすら与えられていないために,これはそれほど容易なことではない.

 

本論文は,受注型のビジネス・ソフトウェアを対象に,まず第一にQDAの枠組みを設計するためのガイドラインを提供している.これは,QDAの研究としては従来扱われてこなかったことであり,本論文の独創的な一面である.

 

第二に,ビジネス・ソフトウェア用にQDAの新しい枠組みを提示している.従来のQDAの枠組みが対象製品のみを適用スコープとしていたのに対して,その枠組みは対象製品であるビジネス・ソフトウェアを取り囲む(ビジネス・ソフトウェアの上位システムに相当する)ビジネス・システムをもQDAの適用スコープとしている.またこのことにより,従来はセリング・ポイントの分析にとどまっていたのに対して,ソフトウェアのバイイング・ポイントの分析を可能にしている.これらは枠組みとしての独創的な一面である.さらには新しいアイデアとして,(a)各種の適合性分析,(b)対重要度による設計ポイントの分析を提案している.最後に,枠組みの実行可能性を示すために具体例を与えている.

 

QDA自体は筆者の独創的なアイデアではないが,本論文は独創的なアイデア,および新規のアイデアに富む内容となっており,全32頁におよぶ力作である.また筆者の知る限り,ソフトウェアQDAの論文として,ソフトウェア品質に特化した国際誌に掲載されたはじめての論文である.